2009年05月27日
コケ学教科書の新刊
思いがけなく、Introduction to bryophyteという初学者向けのコケ学の本が届いた。
ネット通販の本屋さんに予約注文していたのを忘れていた。

すてきな表紙。写真のコケは、キセルゴケ属の一種、Buxbaumia viridis。キセルゴケ属のコケは、配偶体に比べ胞子体が異様に発達していて何とも愛らしい。英語では、"a big head and a small body"と表現されている。また、カタバミみたいな小さな維菅束植物の陰に生えている様子が、コケのサイズの小ささをよく伝えている。
内容はコケ学入門としては、とても充実。コケがどういう植物であるか、よく分かるのではないだろうか。ざっと目を通しただけだが、それだけでもワクワクした。そしてなんと、「生理生態学」の章に、私の書いた論文からの図が引用されていた。これまた思いがけない遭遇で、びっくりした。嬉しい。数ある論文の中から私の論文を選んでくれた著者に感謝。
Introduction to Bryophytes
Alain Vanderpoorten and Bernard Goffinet
292 pages, col plates, figs, tabs.
Cambridge University Press
http://www.nhbs.com/title.php?tefno=161209
ネット通販の本屋さんに予約注文していたのを忘れていた。

すてきな表紙。写真のコケは、キセルゴケ属の一種、Buxbaumia viridis。キセルゴケ属のコケは、配偶体に比べ胞子体が異様に発達していて何とも愛らしい。英語では、"a big head and a small body"と表現されている。また、カタバミみたいな小さな維菅束植物の陰に生えている様子が、コケのサイズの小ささをよく伝えている。
内容はコケ学入門としては、とても充実。コケがどういう植物であるか、よく分かるのではないだろうか。ざっと目を通しただけだが、それだけでもワクワクした。そしてなんと、「生理生態学」の章に、私の書いた論文からの図が引用されていた。これまた思いがけない遭遇で、びっくりした。嬉しい。数ある論文の中から私の論文を選んでくれた著者に感謝。
Introduction to Bryophytes
Alain Vanderpoorten and Bernard Goffinet
292 pages, col plates, figs, tabs.
Cambridge University Press
http://www.nhbs.com/title.php?tefno=161209
Posted by 上野健 at
08:13
2009年05月19日
コケのある風景~(4)
ガードレールの支柱の周りにコケがコロニーを作り、そのなかに草本や樹木の実生が生えていました。天然の寄せ植えですね。植物が何とも素朴だし、その植物と人工の構造物がいい味わいを出していました。先日、東京の桧原村で行われたコケの観察会での一風景です。桧原村は、とても素敵なところでした。

ドーナツ状に作られたコケのコロニーのなかに草本がいくつかみられます。
ヒメジオンが花茎が2本目立っています。

コケはアオギヌゴケ属の何かだと思います。

イラクサのようなものも見えます。

スギの実生も生えています。
ドーナツ状に作られたコケのコロニーのなかに草本がいくつかみられます。
ヒメジオンが花茎が2本目立っています。
コケはアオギヌゴケ属の何かだと思います。
イラクサのようなものも見えます。
スギの実生も生えています。
Posted by 上野健 at
23:55
2009年05月12日
水底の石の苔
現在東京新聞(中日新聞)では、五木寛之さんの「親鸞」が連載中である。これがおもしろい。毎朝新聞を読むのが楽しみだ。日付は忘れてしまったが、その連載第229回『迫りくる嵐の予感(二)』における綽空(読みは「しゃくくう」、親鸞の若い頃の名)とその後輩僧侶、良禅との会話に、苔という言葉が出てきた。久しぶりに再会した良禅に、綽空が近況を尋ねる。すると、良禅は、「水底の石に苔がつくように、あれこれ肩書がたくさんくっついて困っております。わたしは・・・」と近況を説明し始める。「水底の石の苔」。これって藻のことだろうなあ、と推察しています。水底の石にコケが生えているところをあまり見ないし。五木さんに直接聞けば分かることなんでしょうけど、お会いできるわけではないので。この表現を見てピンときたのが、「A rolling stone gathers no moss転石苔を生ぜず 」というイギリスで生れた諺。この諺は、イギリスでは、一箇所に腰を落着けていられないで、たえず商売変えをするような人間に、成功はおぼつかない。もっとはっきり言えば、そういう人間には金がたまらないという意味で使われるそうだ(外山滋比古「ことわざの論理」による)。アメリカでは、逆の意味でこの諺(言葉)が使われるそうだが、そのことはここでは触れない。
「A rolling stone gathers no moss転石苔を生ぜず 」という現象を考えよう。自然の中で石が転がることは、平野や山の陸地ではそうみられない。山では確かに落石というのがあるが、一時的に石が斜面を転がり落ちたとしてもそれはそのうちどこかに落ち着く。日常的に石が転がるという現象は、川の中でみられることである。川の中に存在する石に生える苔とは、藻のことなのではなかろうか。魚のアユが「苔を食む」の苔が藻であるように。日本では、苔という言葉がコケ植物を指す以外に、藻やコケ植物に似た植物を指すことが普通にある。英語のmossも同様である(少なくとも昔は、そうであったことがイギリスの古い文献をみれば分かる)。外山滋比古さんの「ことわざの論理」には、イギリス人、アメリカ人、そして日本人のコケ植物観と「A rolling stone gathers no moss転石苔を生ぜず 」という諺の解釈の関係性が考察されていてとても興味深い。しかし、moss苔という言葉が指すのが藻ならば、藻に対する、あるいは藻を含めた苔という漠然とした生きもの観を考える必要があろう。またしてもどうでもいい妄想を吐露する時間となってしまった・・・。恐縮です。
「A rolling stone gathers no moss転石苔を生ぜず 」という現象を考えよう。自然の中で石が転がることは、平野や山の陸地ではそうみられない。山では確かに落石というのがあるが、一時的に石が斜面を転がり落ちたとしてもそれはそのうちどこかに落ち着く。日常的に石が転がるという現象は、川の中でみられることである。川の中に存在する石に生える苔とは、藻のことなのではなかろうか。魚のアユが「苔を食む」の苔が藻であるように。日本では、苔という言葉がコケ植物を指す以外に、藻やコケ植物に似た植物を指すことが普通にある。英語のmossも同様である(少なくとも昔は、そうであったことがイギリスの古い文献をみれば分かる)。外山滋比古さんの「ことわざの論理」には、イギリス人、アメリカ人、そして日本人のコケ植物観と「A rolling stone gathers no moss転石苔を生ぜず 」という諺の解釈の関係性が考察されていてとても興味深い。しかし、moss苔という言葉が指すのが藻ならば、藻に対する、あるいは藻を含めた苔という漠然とした生きもの観を考える必要があろう。またしてもどうでもいい妄想を吐露する時間となってしまった・・・。恐縮です。
Posted by 上野健 at
15:51
2009年05月05日
絶景!北極のコケ湿原
高緯度北極は「コケの楽園」と言われることもあり、しばしばコケ植物が主となって植生景観を作り出す。
写真は、ノルウェーのスピッツベルゲン島の北西部でみられた広大なコケ湿原である。絶景である。

氷河に削られ、氷雪や雨水に侵食を受けた岩壁。その脚部には岩壁から供給された岩屑が厚く堆積し、その下方には広大な平坦地が広がる。岩壁は海鳥の営巣地となり、平坦地は集水域となっている。北極で豊富な栄養塩と水が供給されると、いつもというわけではないが、写真のようなコケ湿原が形成される。岩屑の堆積地の上にもコケの植被がみられ、まさに、コケの楽園。

湿原を形成するコケの一つ、イワダレゴケ。
写真は、ノルウェーのスピッツベルゲン島の北西部でみられた広大なコケ湿原である。絶景である。
氷河に削られ、氷雪や雨水に侵食を受けた岩壁。その脚部には岩壁から供給された岩屑が厚く堆積し、その下方には広大な平坦地が広がる。岩壁は海鳥の営巣地となり、平坦地は集水域となっている。北極で豊富な栄養塩と水が供給されると、いつもというわけではないが、写真のようなコケ湿原が形成される。岩屑の堆積地の上にもコケの植被がみられ、まさに、コケの楽園。
湿原を形成するコケの一つ、イワダレゴケ。
Posted by 上野健 at
23:55