2009年12月31日
これもホシガラスの仕業?
高山でコケ植物が形成する厚いコロニーからハイマツが芽を出しているのをたまに見かける(下の写真)。

コケ植物(シモフリゴケ)のコロニーで芽生えたハイマツ(南アルプス間ノ岳)。
また、コケのコロニーを採集したときにその中からハイマツの種子が出てきたこともあった(下の写真)。

コケ(たぶん、Grimmia sp.)のコロニーの中から出てきたハイマツの種子(南アルプス間ノ岳)。
何で、こんな所にハイマツの種子が埋まっているんだろうと思っていたのだが、最近「高山植物の自然史」という本のページをめくっていたら、ハイマツの種子をエサとして利用しているホシガラスがそれを地中に貯蔵し、後から回収して食べるという記述を見つけた(梶本 2000)。そして、貯蔵された種子はすべて回収、摂食されるわけではなく、中には忘れ去られるものもあるという。その忘れ去られた種子が発芽、定着することによって、ホシガラスはハイマツの種子散布を手助けしているらしい(梶本 2000)。ということは、コケのコロニーから発芽したハイマツの種子やそのなかにあったハイマツの種子は、ホシガラスが運んできて埋めた可能性が十分考えられる。コケのコロニーは周囲の礫や土壌に比べて保水力が抜群に高いので、ハイマツの種子が発芽、成長する上で大変好都合だと予想される。ただ、ハイマツが大きくなって根を十分伸ばせる場所がコケのコロニーだけで足りるかというと、そうではないだろう。コケは土壌がある場所に必ずしもコロニーを作っているわけではないので、岩礫の上に発達したコケのコロニーのなかでハイマツの種子が発芽したとしても、その後成木に育っていくかどうかは分からない。もし、コケのコロニーがハイマツが将来根を伸ばせる場所の上に形成されていて、そこにホシガラスがハイマツの種子を埋め、その埋められた種子が回収されなかったとすると、そのハイマツの種子は、ほかの場所に埋められた場合よりも発芽率、生存率が高くなるかもしれない。ところで、ホシガラスはコケのコロニーのなかに選択的にハイマツの種子を埋めることはあるのだろうか?

ホシガラス。
オンライン野鳥図鑑
http://www.yachoo.org/Book/Show/674/hosigarasu/
より
参考文献
梶本卓也(2000)ハイマツ群落の成立と立地環境.高山植物の自然史(工藤岳編著),pp.84-98.北海道大学図書刊行会.
コケ植物(シモフリゴケ)のコロニーで芽生えたハイマツ(南アルプス間ノ岳)。
また、コケのコロニーを採集したときにその中からハイマツの種子が出てきたこともあった(下の写真)。
コケ(たぶん、Grimmia sp.)のコロニーの中から出てきたハイマツの種子(南アルプス間ノ岳)。
何で、こんな所にハイマツの種子が埋まっているんだろうと思っていたのだが、最近「高山植物の自然史」という本のページをめくっていたら、ハイマツの種子をエサとして利用しているホシガラスがそれを地中に貯蔵し、後から回収して食べるという記述を見つけた(梶本 2000)。そして、貯蔵された種子はすべて回収、摂食されるわけではなく、中には忘れ去られるものもあるという。その忘れ去られた種子が発芽、定着することによって、ホシガラスはハイマツの種子散布を手助けしているらしい(梶本 2000)。ということは、コケのコロニーから発芽したハイマツの種子やそのなかにあったハイマツの種子は、ホシガラスが運んできて埋めた可能性が十分考えられる。コケのコロニーは周囲の礫や土壌に比べて保水力が抜群に高いので、ハイマツの種子が発芽、成長する上で大変好都合だと予想される。ただ、ハイマツが大きくなって根を十分伸ばせる場所がコケのコロニーだけで足りるかというと、そうではないだろう。コケは土壌がある場所に必ずしもコロニーを作っているわけではないので、岩礫の上に発達したコケのコロニーのなかでハイマツの種子が発芽したとしても、その後成木に育っていくかどうかは分からない。もし、コケのコロニーがハイマツが将来根を伸ばせる場所の上に形成されていて、そこにホシガラスがハイマツの種子を埋め、その埋められた種子が回収されなかったとすると、そのハイマツの種子は、ほかの場所に埋められた場合よりも発芽率、生存率が高くなるかもしれない。ところで、ホシガラスはコケのコロニーのなかに選択的にハイマツの種子を埋めることはあるのだろうか?

ホシガラス。
オンライン野鳥図鑑
http://www.yachoo.org/Book/Show/674/hosigarasu/
より
参考文献
梶本卓也(2000)ハイマツ群落の成立と立地環境.高山植物の自然史(工藤岳編著),pp.84-98.北海道大学図書刊行会.
Posted by 上野健 at
15:41
2009年12月23日
日本では絶滅危惧種
ヌマチゴケPalludera squarrosaは、日本(環境省)のレッドリストで「絶滅危惧Ⅰ類」(http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.htmlを参照)に指定されているコケ植物です。北海道の大雪山にのみ、分布しているとされる希少種です。ところが、地球規模でその分布をみると、北欧、アラスカ、カナダなど北方域のミネラルが豊富な湿原では居る所には居ます。日本はヌマチゴケの分布域の縁ということでしょう。
ヌマチゴケの学名(Palludera squarrosa)の種小名(squarrosa)は、「葉」が反り返っているという意味です。
形が愛らしくて結構好きです。

アラスカのミズゴケ湿原に生育するヌマチゴケ。ヌマチとは沼地(=湿地)のこと。

何か虫みたい?たまたまですが、写真全体の色がクリスマスの飾りみたいですね。タイムリーです。

ヌマチゴケ拡大写真。
ヌマチゴケの学名(Palludera squarrosa)の種小名(squarrosa)は、「葉」が反り返っているという意味です。
形が愛らしくて結構好きです。
アラスカのミズゴケ湿原に生育するヌマチゴケ。ヌマチとは沼地(=湿地)のこと。
何か虫みたい?たまたまですが、写真全体の色がクリスマスの飾りみたいですね。タイムリーです。

ヌマチゴケ拡大写真。
Posted by 上野健 at
23:12