2008年05月26日

より高く

普段は地面に張り付いて生活している葉状タイ類のジャゴケ(ゼニゴケの仲間です)。
春先、成熟した胞子が入っている嚢(ふくろ)を透明な柄を急速に伸ばして持ち上げる。
柄の長さは長くても8cm程度。もちろん、胞子をより遠くに飛ばそうとしてのことだ。
より高く持ち上げ、より遠くへ飛ばす。
高く?、遠く?と、これらの言葉がピンと来ないかもしれませんが、普段使っている物差しを外してください。
これがコケのやり方。


林立するジャゴケの胞子体(胞子嚢+柄)。雌器托(雌器床+柄)ともいう。


林立するジャゴケの胞子体。スケールとして携帯電話といっしょに。


胞子嚢(雌器床)の拡大。


はじけた胞子嚢。薄茶色の糸状のものは、胞子嚢のなかに入っている弾糸(だんし)と呼ばれる構造。乾湿運動によって弾糸がバネのような働きをして、胞子をはじき飛ばす。写真はすべて、長野県菅平高原にて(2008年5月2日)。  

Posted by 上野健 at 23:25

2008年05月21日

こぼれ落ちた話題

TV番組の収録時間は実際の放送時間よりもかなり長いと聞いたことがあったが、「タモリ倶楽部」も例外ではなかった。といっても、放送時間30分に対し、私が出演した回のトータル(オープニング+ゲスト二人分)の収録時間は約2時間半であったので、それほど長くはないのかもしれない。もちろん、ケース・バイ・ケースなのだろうが。よって、私が宛がわれた時間に話をした内容のほとんがカットされているということになる。もっと重要なことを話していたような・・・(笑)。コケ全般の話、ギンゴケの話、ゼニゴケの話、コウヤノマンネングサの話、ホンモンジゴケの話、ミズゴケの話などがあったような気がする。きっと話が地味すぎたんだろうな(笑)。「コケの種名は、コケを顕微鏡の下でいろいろな角度からきちんと観察しないと正確には分かりませんよ」ということもどこかで言っていたような気もするが、言わなかったのかな。

ゼニゴケについて話をしているとき:

上野「ゼニゴケは盛んに無性芽を付けるので、それがこぼれ落ちてよく殖えるんですよ」

タモリさん「(田中さんに)お前、ゼニゴケを育てたらどうだ?」

田中さん「嫌ですよ、僕がゼニゴケを育ててるところを想像してくださいよ、それこそ気持ち悪いじゃないですか」

というようなやりとりがあり、一同大爆笑でした。

ちなみに、田中さんは本当に「ゼニゴケ」が嫌いらしいです。
そして、好きなコケは「キダチヒラゴケ」だそうです。好きなコケとしてキダチヒラゴケを挙げるなんて流石です。
(参考:http://www.ous.ac.jp/garden/My%20HP/IgiPhotos/Igi%20Isobryales%20Homaliodendron.htm
田中さん、ずっとコケ好きでいてくださいね。
田中さんのブログ
http://blog.watanabepro.co.jp/tanakatakushi/


  

Posted by 上野健 at 22:04

2008年05月15日

タモリ倶楽部

テレビ朝日系列で毎週金曜深夜(0:15~)に放送されている流浪の番組「タモリ倶楽部」。
明日16日(金)放送予定のサブタイトルは、地味すぎて伝わらない趣味シリーズ『苔』です(鹿児島では日曜深夜に放送していますが、関東より一ヶ月以上遅れての放送になると思います)。そこに、ちょっとだけですが、出演してます。アンガールズ田中さんのコケ友達候補として。タイトルを見ただけでも笑えるでしょ?どのように編集されているか分かりませんが、収録現場は爆笑の連続でとても楽しかったです。タモリさんをはじめ、タレントさんのパワーに圧倒され、うまくしゃべれていないし、間違ったことを答えている箇所もあるかと思います(反省)。『苔』をネタにしたバラエティ番組ということで、笑い飛ばして頂ければ幸いです。
TV出演に関しておもしろい話がありました。
某大学で自分が担当する講義のガイダンスがあったのですが、そのガイダンス後、学生が私のところに質問にきて、「先生、TVに出たことはありませんか?」と聞いてきました。もちろん、学生の勘違いだったのですが、その日の夜にTV出演の打診が来ました。私よりもコケを知っている人はたくさんいるので、他の人に当たってみて、他に適任者いなければ引き受けるということにしました。で、再び話が回って来たので、結局引き受けた訳です。学生の質問は単なる偶然だったのか、それとも意味のある偶然だったのか・・・。おもしろいでしょ。
  

Posted by 上野健 at 21:45

2008年05月14日

スギゴケとゼニゴケ

一般の人々のコケに対する認識を探るために、講義を担当している大学で文科系の学生に知っているコケの種類をアンケート形式で尋ねた。すると、そのほとんどが「コケの種類なんて知らない」であった。がくっ。コケの種類を知っている少数派が挙げたコケの名前は、圧倒的にゼニゴケが多く、次にスギゴケ、そして、ヒカリゴケであった。この3種しか出てこなかった。ヒカリゴケは変わり種のコケ植物で、場所によっては天然記念物にも指定されているので、希少性の珍奇生物として人々の関心を呼ぶのだろう。ヒカリゴケを除くと、残るはスギゴケとゼニゴケである。これら2種が何とか人々に認識されているコケの種類となろうか。大学生に聞いた程度で一般の人のコケに対する認識を語るのはかなり無理があると思うが、その辺は流して頂きたい。コケと言えば、スギゴケとゼニゴケなのだろうか。今は分からないが、かつて自分が中学、高校で利用した理科、生物学の教科書ではスギゴケ(コスギゴケ?)とゼニゴケがコケの代表として登場していたような気がする。最近邦訳された大学の生物学の教科書でもコケ植物を説明する項で、蘚(セン)類の代表としてスギゴケ、苔(タイ)類の代表としてゼニゴケの写真が使われていた。コケと言えばスギゴケとゼニゴケ、という名前が挙がってくるのは、このような教科書媒体の影響も大きいのだろう。もちろん、ゼニゴケに関しては我々の生活にもっとも身近なコケ植物であるということが第一の理由かもしれない。また、これらのコケは植物体のサイズが大きく、形態も特徴的なので、多くの人々の目に触れ、簡単にスギゴケの類、ゼニゴケの類と識別できるということも理由の一つとして考えられるだろうか。実際私も人にコケ植物の蘚類と苔類を説明するときに、それぞれの代表例としてスギゴケとゼニゴケを話に登場させたりする。それは多くの人がスギゴケやゼニゴケなら知っていると期待してのことで、内心はスギゴケとゼニゴケをコケの代表とするのは無理があると思っている。蘚類においてスギゴケとその仲間、苔類においてゼニゴケとその仲間は、コケ植物のなかでは結構特殊なグループである。それに関しては、またの機会で・・・。



スギゴケPolytrichum juniperinum


ゼニゴケMarchantia polymorpha


  

Posted by 上野健 at 23:58

2008年05月02日

名も知らぬ幼虫の背中の模様

長野県の菅平で研究集会があったので参加してきました。
そこで、何気なくコケをみていたら、おもしろい昆虫の幼虫に遭遇しました。
背中にコケのシュートのような模様があります。
実際にそれが擬態かどうか検証したわけではないですが、パッと見ただけではそれがコケと間違うでしょう。
続けて写真を載せるのでどこにいるか探してみてください。ヒジキゴケのコロニーのなかにいます。


その1.


その2.


その3.

分かりましたか?
どなたかこれが何の幼虫か知っている方は教えてくださいませ。  

Posted by 上野健 at 21:57