2015年09月26日

ギンゴケ

世界中、どこでも生えているギンゴケ。
熱帯から極地、都市から標高の高い山の頂上まで色々な場所で見ることが出来ます。
さて、ギンゴケの学名は、Bryum argenteumと言います。
ラテン語で「銀」のことをargentumと言うことを知らなかった私は、
ギンゴケってアルゼンチンという国と何か関係があるのだなと密かに思っておりました(恥ずかしながら・・・)。
実際は何も関係はないのですが、私の中ではギンゴケって別名、アルゼンチンゴケだったのです。
ただ、アルゼンチンという国名の由来をちょっと調べてみると、ちょっと面白い事が分かりました。
アルゼンチンの国名って、
スペイン語、英語表記でArgentinaと書きます。
ウィキペデアによると、
アルゼンチン(共和国)の国名の由来として以下のような説明がされています。
********************************************引用開始
独立当時にはリオ・デ・ラ・プラタ連合州(あるいは南アメリカ連合州)と呼ばれていた。 リオ・デ・ラ・プラタ(Río de la Plata)=ラ・プラタ川は、スペイン語で「銀の川」を意味し、1516年、フアン・ディアス・デ・ソリスの率いるスペイン人の一行がこの地を踏んだときに、銀の飾りを身につけたインディヘナ(チャルーア人)に出会い、上流に「銀の山脈」(Sierra del Plata)があると信じたことから名づけたとされる。

アルゼンチン Argentina の名は、この「銀の川」にちなみ、ラテン語で「銀」を意味する Argentum に地名表現のために女性縮小辞を添えたものである。スペイン語の「ラ・プラタ」からラテン語由来の名へと置き換えたのは、スペインによる圧政を忘れるためであり、フランスのスペインへの侵略を契機として、フランス風の呼称であるアルジャンティーヌ(Argentine)に倣ったものでもあるという。
********************************************引用終わり。

元々暮らしている住民にとっては変更したい国名かもしれませんが・・・。
それはさておき、
アルゼンチンという国とギンゴケって、名前の由来を辿れば同じ「銀」仲間なんですね。
学名と英名と和名が同じ生物がどのくらいいるか分からないのですが、そう多くはないような気がします。
ギンゴケはその一つです。
学名 ― 英名 ― 和名
Bryum argenteum ― silver moss ―ギンゴケ

植物体の色味が銀色に見える事から名付けられたと考えられるギンゴケですが、
生育場所によって表情は様々です。


ギンゴケ


ギンゴケ


ギンゴケ


胞子体を付けたギンゴケ

  

Posted by 上野健 at 09:57

2015年09月15日

ホソバオキナゴケ

前の前の記事で、
シロシラガガゴケLeucobryum glaucumが白っぽいコケだということを紹介しましたが、
何で白っぽく見えるのかということについては触れていませんでした。
何で白っぽく見えるかというと、多くのコケ植物では、
葉の主要部分が葉緑体を含む細胞(葉緑細胞)がたった一層並んだだけの作りなのに対して、
シロシラガゴケは、一層の葉緑細胞が葉緑体を含まない透明な細胞(透明細胞?)数層に挟まれた分厚い作りになっているからです。
これは、シロシラガゴケに限らず、
シラガゴケ属Leucobryumに共通する特徴ですが。
さて、欧米で普通に見られるシロシラガゴケが日本では稀な種であると前に書きましたが、
日本ではそれに代わってホソバオキナゴケというシラガゴケ属のコケが普通に見られます。
シロシラガゴケに似た種として紹介され、盆栽や苔庭にもよく使われます。


ホソバオキナゴケ

ホソバオキナゴケもやはり白っぽいコケなのですが、学名には別の表現がされています。
ホソバオキナゴケ、学名をLeucobryum juniperioideumといいます。
種小名の"juniperioideum"、これはjuniper(ジュニパー)っぽいという意味です。
juniper(ジュニパー)って何かというと、ビャクシン(或いはネズ)という針葉樹です。
ホソバオキナゴケの色か形がビャクシンに似ていると捉えられたということですね。


ハイビャクシンJuniperus chinensis var. procumbens

参考までにハイビャクシンの写真を載せましたが、似てますかね。

juniper(ジュニパー)繋がりで、
学名にjuniperという言葉が使われているメジャーな種を紹介して終わりにします。
スギゴケPolytrichum juniperinumです。


スギゴケPolytrichum juniperinum

参考までに、、、

ハイビャクシンJuniperus chinensis var. procumbens

日本では杉(スギ)の葉に似ていると捉えられたコケですが、
欧州ではネズに似ていると捉えられたということだと思われます。

  

Posted by 上野健 at 15:38

2015年09月11日

陰と陽

昨日、用事があって地下鉄の清澄白河駅を利用したのですが、
ついでに清澄庭園を散策しました。
平日の雨の中でしたので、
庭園を散策している人は誰もおらず貸し切り状態でした。


清澄庭園

そこで見かけた立て札二つ。



清澄庭園にあった立て札その1

一つは、よく見かける立て札。

芝生に入らないでください
Please keep off the grass

もう一つは、こんなのあるんだ、という立て札。

苔に入らないでください
Keep off the moss

ちょっと強い口調なんですかね(笑)。
確かに苔の方が芝に比べて踏圧に弱いけれども。


清澄庭園にあった立て札その2
この立て札があるところに生えているのはカーペット状になっているコツボゴケです。

陰と陽なんて記事のタイトル、
どういう意味?と思うかもしれませんが・・・。
芝の方が明るい環境に生育しているので、立て札の写真が明るくて文字がはっきり見えます。
一方、苔の方は、
植栽されている樹木が作った暗い環境にたくさん生えているので、
立て札の写真が暗くて文字がよく見えなくなっています。
(ほぼ同じ時刻に撮った写真であるにもかかわらず)
対照的ですね、という話でした。
コケが暗い所に生えているというイメージは、分からなくありません。



  

Posted by 上野健 at 17:35

2015年09月08日

シロシラガゴケの名前

前の記事に続き、シロシラガゴケについて。
「名は体を表す」ということが必ずしも成り立つわけではありませんが、
シロシラガゴケの名前は植物体の特徴を素直に表現しています。
シロシラガゴケ。
漢字で書くと「白白髪苔」と表され、
短い言葉の中に白という色を表す言葉が2回も使われているのがよく分かります。
何かすごく「白っぽいコケ」が想像できます。
では学名はどうか。
シロシラガゴケの学名は、Leucobryum glaucumと言います。
属名の"Leucobryum"は、"Leuco"と"bryum"という言葉に分解でき、
Leuco=白い、bryum=コケで、白いコケという意味があります。
(和名ではシラガゴケ属と言いますが)
種小名の"glaucum"には、「白みを帯びた」、「灰色みを帯びた」、
或いは「(蝋のような)白い粉がふいたような」という意味があります。
つまり、属名、種小名ともに、白色を表す言葉が使われています。
やはりシロシラガゴケは、学名からもすごく「白っぽいコケ」が想像されます。

<追記>
"Leuco"という言葉には「青白い」という意味もあるようで、
"Leucobryum"という属名は、青白いコケとした方がより正しい捉え方かもしれません。


シロシラガゴケLeucobryum glaucum
左の写真が湿った状態、右が乾いた状態。

乾いた状態のシロシラガゴケは、まさに「白いコケ」ですね。
湿った状態は、「青白いコケ」ですかね。

参考までに、
"glaucum (=glauca)"という種小名をもつ植物種(コケ以外の植物も含めて)をいくつか挙げておきます。


ハタケゴケRiccia glauca

葉状体の表面が粉をふいたように白っぽくなっているタイ類です。


シロトウヒPicea glauca(写真の真ん中の樹木)

幹が白っぽい?


アラカシQuercus glaucaという樹木の葉

葉の裏側が白っぽくなっています。  

Posted by 上野健 at 21:24

2015年09月04日

シロシラガゴケ

最新の「蘚苔類研究」に、
シロシラガゴケLeucobryum glaucumに関する報告が掲載されました。
絶滅危惧種の生育状況を記録する一つの報告として。
日本では生育地がかなり限られているので絶滅危惧種となっていますが、
欧米では普通に見られる種のようで、苔庭の材料にも使われているようです。
日本におけるホソバオキナゴケLeucobryum juniperioideumのようです。
ところ変われば、ですね。
シロシラガゴケが水を植物体に含んでいる様子はとても美しいです。


シロシラガゴケ(北海道根室市歯舞の高層湿原)


シロシラガゴケ(同上)


乾燥状態のシロシラガゴケ(同上)


生育地の一つ北海道根室市歯舞の高層湿原


ノリウツギの根元にコロニーを作るシロシラガゴケ(北海道標津湿原)


シロシラガゴケ(同上)
ハイゴケの仲間が混じっています。


シロシラガゴケ(同上)


生育地の一つ北海道標津湿原


  

Posted by 上野健 at 15:32

2015年09月01日

苔をみる旅Act.21のご案内

東京・五日市で予定されていた苔をみる旅は、先日無事に終わりました。
次の旅の案内をさせて頂きます。
いつか富士山で「苔をみる旅」をやってみたいと思っていました。
いよいよ今年、9月に開催したいと思います。
富士山と一口で言っても色々な場所、植生がありますが、
今回は山梨県側の三合目~五合目周辺を巡ります。
植生としては、高山帯、亜高山帯の植生です。
富士山ではどのようなコケがみられるのでしょうか・・・。
興味のある方はお問い合わせくださいませ。


苔生した亜高山帯針葉樹林の林床。


倒木上のミヤマクサゴケ。


糞ゴケの一種、ユリミゴケ。


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苔をみる旅Act.21
「富士山」
日時:9月26日(土)御中道周辺の高山帯植生(11:30~17:00頃)、
  27日(日)吉田口登山道の亜高山帯針葉樹林(9:00~16:00頃)
集合、解散:富士急行河口湖駅、或いは奥庭山荘
参加費:6000円、+宿泊される方は宿泊代の実費
宿泊される場合の宿 : 奥庭山荘
定員:8名
お問い合わせ、お申し込み先:sanionia@nifty.com(上野)
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苔をみる旅、それは足もとの自然を巡る旅。
  

Posted by 上野健 at 16:39