2008年06月09日

近所のホンモンジゴケ

東京大田区にある池上本門寺というお寺にちなんだ名をもつコケが存在する。ホンモンジゴケである。
文献によると、明治43年に本門寺の境内にある建物の軒下で、最初に発見されたらしい。このコケはちょっと(かなり?)変わっていて、環境中に銅分が大量に存在する場所に特異的に生えている。よって、「銅ゴケ」とも呼ばれる。銅はコケ植物を含めた植物全般の生育にとって必須の元素ではあるが、過剰に存在する銅は植物にとって毒となり、その生育を阻害する。お寺に銅ゴケ?と不思議に思う人もいるかもしれないが、お寺や神社の建物の屋根は耐久性の観点からしばしば銅葺き屋根が使われている。銅葺き屋根を伝い降りてくる雨水は銅分を多く含んでおり、銅葺き屋根から供給される雨水が落ちる場所は大量の銅分が蓄積する環境となる。そういった場所は、しばしば緑青がふいているので視覚的に確認できる。よって、神社仏閣の銅葺き屋根の軒下は、銅ゴケ、ホンモンジゴケにとって格好の生育場所となる。といっても、銅葺き屋根の軒下に必ず、ホンモンジゴケがいるという訳ではないけど。

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ところで、来る6月21日(土)にテレビ東京系で放送される「出没!アド街ック天国」(午後9:00~9:54)では池上本門寺が特集されますが、池上本門寺トップ30のなかにホンモンジゴケもランクインしているみたいです。さて、何位でしょうか・・・。
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かなり前置きが長くなってしまったが、今回ホンモンジゴケを話題にしたのは、近所の神社で、たくさんのホンモンジゴケのコロニーを見つけたという報告がしたかったのだ。まあ、日本各地で何十箇所と生育地が報告されているので、別にニュースにはならないが、新産地ではある(笑)。自分が住んでいる場所から歩いて数分のところにある、地域の氏神様のところにたくさんいました。何だか嬉しい。



東京都豊島区にある天祖神社の拝殿。花崗岩の石組みの基礎の上に建つ。



拝殿の側面。


拝殿側面の軒下。本神社におけるホンモンジゴケの生育場所の一つ。花崗岩の石組みの隙間にあるコケがホンモンジゴケ。


ホンモンジゴケのコロニー。草本の種子がトラップされている。


ホンモンジゴケの植物体(光学顕微鏡写真 倍率40倍)


ホンモンジゴケの無性芽(光学顕微鏡写真 倍率200倍)。
ホンモンジゴケは胞子体を作らず(作れず?)、つまり胞子も作れないわけだが、主にこの無性芽という繁殖体を作って新たな生育場所に侵入すると考えられている。



  

Posted by 上野健 at 23:59