2009年03月31日
樹冠のコケ

http://www.nhbs.com/forest_canopies_tefno_42572.html&tab_tag=desc
林冠生物学、林冠生態学の教科書
"Forest Canopies 2nd edition"(Edited by Lowman M. & Rinker B., 2004, Elsevier Academic Press)の表紙を見事に飾っているのは、地上高くそびえる樹木の枝を厚く覆っているコケ植物です。じつに見事。このコケは具体的には、アメリカ、オレゴン州に存在する樹高70m以上あるダグラスモミの地上60mにある枝に着生しているイタチゴケ科蘚類Antitrichia curtipendula だそうです。日本には分布していません。
この本には、Lichens and Bryophytes in Forest Canopiesという総説が収められていて、第8章を構成しています。著者は、Stephen Sillet & Marie Antoine。日本語表記をするなら、スティーブ・シレットとマリー・アントワーヌとなりますかね。この名前、どこかで見たことがあると思った方はすごい。昨年、「世界一高い木」という日本語タイトルで出版されたリチャード・プレストンが世界一高い林冠の世界を巡る冒険を描いた本(渡会圭子訳)に登場している研究者です。たしかご夫婦だったような。
スティーブ・シレットとマリー・アントワーヌによると、樹冠にたくさんのコケ植物が着生している森林生態系(温帯雨林や熱帯雨林)でのコケ植物の役割は大きく二つあるようです。一つは、樹冠がコケ植物の厚いマットに覆われることによって、樹冠の表面積が増加し、空気に乗って運ばれてくる様々な栄養塩を森林生態系として大量に吸着できるようになるということです。もう一つは、コケ植物が樹冠部にスポンジ状の有機物や土壌を形成するのに貢献し、そのことによって、樹冠で生活する生物(鳥も含む)の生息場所を生み出しているということです。

http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E9%AB%98%E3%81%84%E6%9C%A8-%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3/dp/4822283631/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1238465500&sr=8-1
スティーブ・シレットとマリー・アントワーヌは、この本では地衣類のことを多く語っていますが、樹冠に生育するコケや地衣の魅力を伝えてくれています。
Posted by 上野健 at
12:50
2009年03月24日
キャラクターとしてのコケ
昨今、キャラクターと呼ばれる架空の存在が多数生み出され、あちこちで人気を博しているようである。
「ゆるキャラ」なるものも存在する。さて、今日はコケ植物をモチーフとしたキャラクターを紹介する。コケなんかキャラクターのモチーフになりうるのかと思うかもしれないが、なっているのである。どんなキャラクターかというと、PSP「プレイステーション・ポータブル」のゲームソフト「勇者のくせになまいきだor2」に登場するキャラクターである。

「勇者のくせになまいきだor2」
このゲームソフトには、ニジリゴケという架空のコケをはじめ、それの仲間のような存在であるアメリカニジリゴケ、ヒヤシニジリゴケなど、これまた架空のコケが登場している。粘菌みたいだけど、コケだということだ。これらのコケがにじり寄って勇者をやっつけるようである。何のこっちゃ?と思うだろうが、詳しくは、このゲームの公式サイトをみてほしい。
http://www.jp.playstation.com/scej/title/or2/
この公式サイトには、コケ好きという設定の女の子が、コケに関するポエムを朗読している動画がいくつか隠されている。興味のある人は「ホリホリ動画祭」というコーナーへ。コケをちょっと小ばかにしたようなポエムで、コケ好きの身としては、それが自虐的でおもしろかった。私はこのゲームソフト関係者に、ニジリゴケが既存のコケのなかでどのコケに近いのか専門家の意見を聞きたいとインタビューを受けたことがあり、そのときはゼニゴケの仲間っぽいと答えたが、まったく専門家らしい意見ではなかったかもしれない。
「ゆるキャラ」なるものも存在する。さて、今日はコケ植物をモチーフとしたキャラクターを紹介する。コケなんかキャラクターのモチーフになりうるのかと思うかもしれないが、なっているのである。どんなキャラクターかというと、PSP「プレイステーション・ポータブル」のゲームソフト「勇者のくせになまいきだor2」に登場するキャラクターである。

「勇者のくせになまいきだor2」
このゲームソフトには、ニジリゴケという架空のコケをはじめ、それの仲間のような存在であるアメリカニジリゴケ、ヒヤシニジリゴケなど、これまた架空のコケが登場している。粘菌みたいだけど、コケだということだ。これらのコケがにじり寄って勇者をやっつけるようである。何のこっちゃ?と思うだろうが、詳しくは、このゲームの公式サイトをみてほしい。
http://www.jp.playstation.com/scej/title/or2/
この公式サイトには、コケ好きという設定の女の子が、コケに関するポエムを朗読している動画がいくつか隠されている。興味のある人は「ホリホリ動画祭」というコーナーへ。コケをちょっと小ばかにしたようなポエムで、コケ好きの身としては、それが自虐的でおもしろかった。私はこのゲームソフト関係者に、ニジリゴケが既存のコケのなかでどのコケに近いのか専門家の意見を聞きたいとインタビューを受けたことがあり、そのときはゼニゴケの仲間っぽいと答えたが、まったく専門家らしい意見ではなかったかもしれない。
Posted by 上野健 at
11:31
2009年03月17日
屋久島ブック2009
山と渓谷社から出されているムック誌「屋久島ブック」の2009年版です。
素晴らしい表紙です。

http://www.yamakei.co.jp/products/detail.php?id=905020
120ページのうち、じつに37ページにコケが何らかの形で登場しています。私の妄想であり、勝手な思い込みかもしれませんが、屋久島はコケの島であり、コケの聖地ですよね。本ではコケに的を絞った記事はありませんが、あちこちでコケについて触れています。じつは私、屋久島へは一度も行ったことがありません。だから本当は屋久島のコケを詳しく語れないのです。アンガールズの田中さんは屋久島に行ったことがあり、屋久島のコケはよかったというような話をしていたような気がします。田中さんの好きなコケは、確かキダチヒラゴケだったっけ。
素晴らしい表紙です。

http://www.yamakei.co.jp/products/detail.php?id=905020
120ページのうち、じつに37ページにコケが何らかの形で登場しています。私の妄想であり、勝手な思い込みかもしれませんが、屋久島はコケの島であり、コケの聖地ですよね。本ではコケに的を絞った記事はありませんが、あちこちでコケについて触れています。じつは私、屋久島へは一度も行ったことがありません。だから本当は屋久島のコケを詳しく語れないのです。アンガールズの田中さんは屋久島に行ったことがあり、屋久島のコケはよかったというような話をしていたような気がします。田中さんの好きなコケは、確かキダチヒラゴケだったっけ。
Posted by 上野健 at
22:05
2009年03月10日
コケはエロチック?
色んな人のコケ植物観を聞くのが好きだ。それがその道を極めた人の言葉なら尚更である。
画家の横尾忠則さんは、コケは肉感的だと表現する。
「日本の庭」という日本庭園の魅力を写真と文章で綴る本に寄せられた横尾忠則さんのコケ植物観である。
その一部を引用させていただく。
「苔の手に馴染む感触と、ほどよい湿り具合がエロチックでぼくは好きだ。女性の秘部に手の平をそっと落とした感触とでも言おうか。それほど苔は肉感的なのである。」
また、これらの文章の直前には、
「それにしても苔を剥がしてその下を覗いてみたい衝動にかられるのはなぜだろうか。苔の下に何か秘密が隠されているようで、胸がときめくのはぼくだけではあるまい。」とある。
なるほど。おもしろいですね。
研究者のなかにも、あるコケの生殖器官をみてニヤニヤしていた人がいたような気がするが、記憶が定かではない。私のこと?たぶん違ったような・・・。

日本の名庭が素晴らしい写真で紹介されるとともに、
23人の著名な粋人が日本の庭の魅力について独自の切り口で語っています。苔も満載です。
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%BA%AD-%E3%81%BB%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%AE%E6%9C%AC-%E5%86%99%E7%9C%9F-%E5%86%85%E8%97%A4-%E5%BF%A0%E8%A1%8C/dp/4418072217/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1236643861&sr=8-2
画家の横尾忠則さんは、コケは肉感的だと表現する。
「日本の庭」という日本庭園の魅力を写真と文章で綴る本に寄せられた横尾忠則さんのコケ植物観である。
その一部を引用させていただく。
「苔の手に馴染む感触と、ほどよい湿り具合がエロチックでぼくは好きだ。女性の秘部に手の平をそっと落とした感触とでも言おうか。それほど苔は肉感的なのである。」
また、これらの文章の直前には、
「それにしても苔を剥がしてその下を覗いてみたい衝動にかられるのはなぜだろうか。苔の下に何か秘密が隠されているようで、胸がときめくのはぼくだけではあるまい。」とある。
なるほど。おもしろいですね。
研究者のなかにも、あるコケの生殖器官をみてニヤニヤしていた人がいたような気がするが、記憶が定かではない。私のこと?たぶん違ったような・・・。

日本の名庭が素晴らしい写真で紹介されるとともに、
23人の著名な粋人が日本の庭の魅力について独自の切り口で語っています。苔も満載です。
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%BA%AD-%E3%81%BB%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%AE%E6%9C%AC-%E5%86%99%E7%9C%9F-%E5%86%85%E8%97%A4-%E5%BF%A0%E8%A1%8C/dp/4418072217/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1236643861&sr=8-2
Posted by 上野健 at
10:46
2009年03月06日
新潮45(3月号)の表紙

桃や桜の花もいい、松もいい、そして何より苔がいい。
苔がきらきら輝いて見えます。苔は松の苗床となっているのでしょうか。是非、書店で見てください。思わず、「おおーっ」と叫びたくなるかも。東京・奥多摩にある茅葺の古民家だそうです。
写真を撮ったのは、近藤政弘さんという写真家。このような古民家の写真集が出るといいな。
以下のアドレスへアクセスすると、近藤さんの作品を垣間見ることができます。
http://www.qphoto-int.com/lib2/lib_kondo.html
Posted by 上野健 at
10:14
2009年03月03日
永瀬清子さんの詩
「詩人の感性には、感服する。」とは、先月26日の東京新聞朝刊の筆洗というコラムの書き出しである。
続けて永瀬清子さんの詩が紹介されていた。私も、詩人のというより、永瀬清子さんの感性に感服している。
永瀬清子さんは、「苔について」という詩を書かれていて、この詩が実にすごいのだ。
以下は、「苔について」の冒頭の一節である。
水と土と雲と霧しかなかった何億年もの昔
見渡してもまだ泳ぐものも這う者も見当たらなかったおどろの時
濛々の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめに
お前は陽と湿り気の中からかすかに生れたのです
なぜと云って
地球がみどりの着物をとても着たがっていたから
冒頭だけでもすごいでしょ。永瀬清子さんは苔に何を見たのだろうか。
物事の真実や本質は科学者だけが明らかにできるわけではなく、
芸術家が科学者よりも物事の本質を見抜いていることは少なくないと思う。
ただ、それが科学的ではないということで切り捨てられることも少なくない。
コケって何なんだろう?
私は科学的なアプローチで追究していこうと思う。
先に取り上げた東京新聞のコラム
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2009022602000048.html
「苔について」が収められている永瀬清子さんの詩集

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%81%91%E3%81%8C%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%82%88-%E6%80%9D%E6%BD%AE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC-%E5%90%8D%E8%91%97%E5%90%8D%E8%A9%A9%E9%81%B8-%E6%B0%B8%E7%80%AC-%E6%B8%85%E5%AD%90/dp/478373058X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1236048443&sr=8-1
続けて永瀬清子さんの詩が紹介されていた。私も、詩人のというより、永瀬清子さんの感性に感服している。
永瀬清子さんは、「苔について」という詩を書かれていて、この詩が実にすごいのだ。
以下は、「苔について」の冒頭の一節である。
水と土と雲と霧しかなかった何億年もの昔
見渡してもまだ泳ぐものも這う者も見当たらなかったおどろの時
濛々の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめに
お前は陽と湿り気の中からかすかに生れたのです
なぜと云って
地球がみどりの着物をとても着たがっていたから
冒頭だけでもすごいでしょ。永瀬清子さんは苔に何を見たのだろうか。
物事の真実や本質は科学者だけが明らかにできるわけではなく、
芸術家が科学者よりも物事の本質を見抜いていることは少なくないと思う。
ただ、それが科学的ではないということで切り捨てられることも少なくない。
コケって何なんだろう?
私は科学的なアプローチで追究していこうと思う。
先に取り上げた東京新聞のコラム
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2009022602000048.html
「苔について」が収められている永瀬清子さんの詩集

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%81%91%E3%81%8C%E3%81%9F%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%82%88-%E6%80%9D%E6%BD%AE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC-%E5%90%8D%E8%91%97%E5%90%8D%E8%A9%A9%E9%81%B8-%E6%B0%B8%E7%80%AC-%E6%B8%85%E5%AD%90/dp/478373058X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1236048443&sr=8-1
Posted by 上野健 at
12:29