2008年05月14日
スギゴケとゼニゴケ
一般の人々のコケに対する認識を探るために、講義を担当している大学で文科系の学生に知っているコケの種類をアンケート形式で尋ねた。すると、そのほとんどが「コケの種類なんて知らない」であった。がくっ。コケの種類を知っている少数派が挙げたコケの名前は、圧倒的にゼニゴケが多く、次にスギゴケ、そして、ヒカリゴケであった。この3種しか出てこなかった。ヒカリゴケは変わり種のコケ植物で、場所によっては天然記念物にも指定されているので、希少性の珍奇生物として人々の関心を呼ぶのだろう。ヒカリゴケを除くと、残るはスギゴケとゼニゴケである。これら2種が何とか人々に認識されているコケの種類となろうか。大学生に聞いた程度で一般の人のコケに対する認識を語るのはかなり無理があると思うが、その辺は流して頂きたい。コケと言えば、スギゴケとゼニゴケなのだろうか。今は分からないが、かつて自分が中学、高校で利用した理科、生物学の教科書ではスギゴケ(コスギゴケ?)とゼニゴケがコケの代表として登場していたような気がする。最近邦訳された大学の生物学の教科書でもコケ植物を説明する項で、蘚(セン)類の代表としてスギゴケ、苔(タイ)類の代表としてゼニゴケの写真が使われていた。コケと言えばスギゴケとゼニゴケ、という名前が挙がってくるのは、このような教科書媒体の影響も大きいのだろう。もちろん、ゼニゴケに関しては我々の生活にもっとも身近なコケ植物であるということが第一の理由かもしれない。また、これらのコケは植物体のサイズが大きく、形態も特徴的なので、多くの人々の目に触れ、簡単にスギゴケの類、ゼニゴケの類と識別できるということも理由の一つとして考えられるだろうか。実際私も人にコケ植物の蘚類と苔類を説明するときに、それぞれの代表例としてスギゴケとゼニゴケを話に登場させたりする。それは多くの人がスギゴケやゼニゴケなら知っていると期待してのことで、内心はスギゴケとゼニゴケをコケの代表とするのは無理があると思っている。蘚類においてスギゴケとその仲間、苔類においてゼニゴケとその仲間は、コケ植物のなかでは結構特殊なグループである。それに関しては、またの機会で・・・。

スギゴケPolytrichum juniperinum

ゼニゴケMarchantia polymorpha

スギゴケPolytrichum juniperinum

ゼニゴケMarchantia polymorpha
Posted by 上野健 at
23:58