2017年09月01日

学会のエクスカーションにて

昨日まで、群馬県のみなかみ町で行われたコケ学会に参加していました(29日~31日まで)。
その最終日に行われたエクスカーションは、谷川岳の天神平周辺が舞台でした。
そこでは、雨上がりの後の美しいコケたちを見ることが出来ました。
天神平から谷川岳への登山道は、あちこちから水がしみ出していて楽しいです。


ピューと微かな音を立てて水がしみ出している場所。
生えているコケは、コセイタカスゴケやホソバミズゼニゴケなど。

ところで、
配布された出現種のリストを見て気づいたのですが、エゾハイゴケHypnum lindbergiiって、
ハイゴケ属Hypnumではなく、ヤリノホゴケ属Calliergonellaに帰属するという考え方があったのですね。
日本のヤリノホゴケ属は、
1種類、ヤリノホゴケCalliergonella cuspidataだけだと思っていたので、「?!」となってしまいました。
平凡社の図鑑(2001)のエゾハイゴケの説明を見たら、
[ノート]本種をヤナギゴケ科のヤリノホゴケ属に含める考えもある、という記述がありました。
New catalog of the mosses of Japn(2004)で確認すると、
エゾハイゴケはヤリノホゴケ属Calliergonellaでした。
そして、Hypnum lindbergiiが異名(シノニム)になっています。
イギリスのコケ学会が出版しているフィールドガイド(2010)を見ると、こちらもやはり、
エゾハイゴケはヤリノホゴケ属Calliergonellaで、Hypnum lindbergiiが異名になっていました。
(参照http://rbg-web2.rbge.org.uk/bbs/Activities/mosses/Calliergonella%20lindbergii.pdf
DNAの情報ではこちらが支持されているのでしょうかね。

下の写真は、天神平のスキー場ゲレンデの草原湿地に生えていたエゾハイゴケです。
(自分ではこのコケが生えていることに気づかず、教えて頂きました)
 

エゾハイゴケCalliergonella lindbergii(=Hypnum lindbergii


同じく、エゾハイゴケ

エゾハイゴケがヤリノホゴケ属Calliergonellaだと、湿地に生えている様子もしっくりくる気がします。

○○ハイゴケという和名だと、ハイゴケ属Hypnumの仲間だと普通に思ってしまうのですが、
今ではハイゴケ属だとは全く思わないタチハイゴケPleurozium schreberiも、
かつてはHypnum schreberiとされていたのですよね。



谷川岳

山頂まで登ったわけではありませんが、谷川岳、とてもいいところでした。
いつか苔旅で訪れたいと思いました。
群馬県(みなかみ町)で行われたコケ学会の開催に携われたすべての方に感謝致します。


  

Posted by 上野健 at 22:49